1/8スケールのシェルビー・コブラの開発
「1/8スケールモデルのコブラを組み立てて、モデル制作の新境地へ!」
アイデアはシンプルだった。世界に1台しか存在しないマスタング・スーパー・スネークとは異なり、コブラは比較的一般的な車だ。「スネーク」よりも容易に実車を見つけ出せるはず。
「だが、どのコブラをベースにすべきか? 289、それとも427か? コンペティション・バージョンかストリート・バージョンか? 色はブルーかレッドか? 年式は?」など、選択肢は尽きない。最終的には、427セミコンペティションをベースにすることにした。巨大なエンジン、そしてレースモデルとロードモデルの完璧なバランスをぜひとも表現したいと思った(セミコンペティションモデルではウィンドシールドがあるが、フルコンペティションモデルではウィンドシールドがない。S/C上の可動式サンバイザーもいいアクセントになる!)
そこで私たちは1/8スケールの1965シェルビー・コブラ427S/Cのモデルの製品化に着手した。ここで実務的な問題が頭をもたげ始めた。1960年代、何百台ものコブラがキャロル・シェルビーの工場で製造されたが、セミコンペティションモデルに改修されたのは、そのうち29台のみ。その29台のうちの1台を見つけ出すことは、もちろんこの世でたった1台のマスタングを見つけ出すことよりも容易だが、探していくうちに、アクセスできないマシンや、改造により製造当時そのままの仕様でないマシンがあることが分かった。ありがたいことに、ラスベガスのシェルビー・アメリカンに勤める友人が、ベースとして使用できるオリジナルの1965年モデルをワークショップに置いていたことが分かり、訪問することにした。
1965シェルビー427コブラのオリジナルのエンジン
1965シェルビー・コブラのオリジナルのホイール。グッドイヤーのロゴが色褪せている
1965シェルビー・コブラのオリジナルの座席
3Dデザインと金型
Agoraの他のモデル同様、オリジナルのマシンのすべての構成要素を3Dモデルで描画し、それに基づき、1/8スケールのレプリカのすべてのパーツを一つひとつつくる。そして、パーツ同士をどのような順番でどのように組み立てるかを画面上でチェックする。
シェルビー・コブラの3D描画
シェルビー・コブラのエンジンの3D描画
1/8スケールなら、小さなスケールよりさらに細かな部分を再現できる。製造当時のままのオイルフィルターを苦労して見つけ出し(消耗品は、新しい別物と交換されてしまうことがよくある)、下の画像から分かるように、1/8スケールのオイルフィルターに、実物と同じ正確なテキストを印刷することができた。左側の赤いオイルフィルターはオリジナルの写真、右側のアートワークは精緻なレプリカをデザインする段階で制作されたものだ。
もちろん、Agoraのモデルでは、オイルフィルターは組み立てパーツのひとつとなるため、アートワークの上部はグレーになっている。
オリジナルのオイルフィルター(左)と、1/8スケールモデルのアートワーク(右)
コンピュータによる設計の後、各パーツの金型を製作する。金型のサイズはさまざまだが、下の写真の金型でも工場内で移動するには天井吊り下げ型のウィンチが必要だ。2枚の写真はタイヤとホイールの金型だ。タイヤの型をした1枚目の金型の写真では、左側の円は窪んでいて、右側の円は突出しているのが分かるだろう。この左右の金型が合わさって、タイヤの形になる。そこに液状ゴムを注入し、金型で表現されたあらゆる細部を反映した形で固める。成形されたタイヤは、手作業の検査を経て、オリジナルのタイヤに忠実に白の塗装を施され、グッドイヤーのロゴがあしらわれる。
シェルビー・コブラのタイヤの金型
シェルビー・コブラのホイールリムの金型
現在、製造が進行中である。最新モデル製造の進展と、製造初期のプロセスについて、今後もお知らせできることを楽しみにしている。
下の写真に映っているのは、モデルがすばらしい仕上がりになることを確認するために組み立てたプロトタイプだ。細かなディティールも再現されている。これをたたき台に、皆さんが制作することになる最終的なモデルに仕上げるために必要な、さらなる改善を加えていく。
シェルビー・コブラのモデルのプロトタイプ